理事長所信 第69代理事長 新谷 正樹

一般社団法人網走青年会議所
第69代理事長 新谷 正樹
2020年度 理事長所信

「ひとに感動を まちをスマートに 感動溢れるスマートシティ網走の創造」

【はじめに】

夢や希望という言葉は、美しい。しかしながら、夢や希望を本気で叶えようとすること は、無知で残酷でもある。どの世界も、脚光をあびるのは一握りの人物であり、光の影で 多くの挫折がある。絶対に無理だと言われながら、合格を目指した浪人生活。東京のど真 ん中で新聞配達をしながら、自分の無力さに涙した。しかし、一度きりの人生、自ら道を 切り拓くんだという青臭い思いで、受験もその後の職業の選択も、世間体や周りの評価で はなく、自分自身で決断してきた。 2009年に網走JCに入会し、12年目となる。経済的に苦しい時期もあったし、投げ出したこともあったが、常に助けてくれた仲間がいた。ありがたいと思った。理屈ではない。先輩たちは大変な時に私を助け、決して毛並の良くない私がこれからどう生きるか、を教えてくれた。「今を大切に生きろ」、「千里の道も一歩から」であると。私は、JCの先輩、仲間、そしてこの地域に、生かされてきた。JCとは、困っている人を助ける団体であればいい。そんなJCに、私がいつも助けられ、生かされてきた。夢や希望を追うことは無知で残酷である。しかし、光は当たらないかもしれないが、そこには誰にもわからないその人なりの生き方、人生の意義がある。生きてきた証がある。批判も承知のうえで経営者でもない私が、日本で28番目、北海道で4番目の設立である歴史と伝統ある網走JCの理事長の職をお預かりする。分不相応な決断である。なぜ、私は理事長の職をお預かりしたか。網走JCが、今、存続の危機にある。私に生きる喜びを与えてくれた団体が、消滅の危機にある。私は、誓う。この団体を必ず未来に残すことを。「偉大なるものは、すべて嵐の中に立つ」それが、2020年に理事長の職を預かる私の使命である。

【基本理念(ミッション)―「ひとに感動を まちをスマートに」 】
網走JCが2020年、何のために事業を行うのか、なぜ私たちは存在するのか。人を 動かすには、人の心を動かさねばならない。感動とは、人の心を動かすことである。それ には人の痛み、苦しみ、悩みを感じる感性がなければならない。理屈や知識で人の心は、 決して動かない。私たちは、人の心を動かす存在になる。それは、家族や会社の仲間、JCメンバー、地域の人に対してもそうである。自分のまわりにいるひとを感動させる人に なろう。そして、まちをスマートにする。5Gの商用化が開始される2020年を起点として、すべてのものがインターネットにつながる時代がはじまる。人口減少、少子高齢化に起因する様々な課題を解決できるのは、テクノロジーの利活用にしか道はない。スマートシティ網走が地域の課題を解決するのである。

【目指す姿(ビジョン) ―「まちのど真ん中に、網走JCあり」 】
「ひとに感動を まちをスマートに」、その理念の実現に向けて、私たちが目指すべき姿 とは、「まちのど真ん中に、網走JCあり」である。あらゆるところで、網走JCの存在感を示したい。家族が悩んでいる、会社内で解決すべき課題がある、JCメンバーが困っている、イベントに人手が足りない、もしくは町内会で困っていることがあるかもしれない。JCそしてJAYCEEに期待されている役割を真摯に受け止め、人を助け、感動を生み出していく。そして、JCは政策立案実行団体である。スマートシティの実現に向けた政策立案や運動は、様々な関係機関を巻き込み、新たな価値を共創するであろう。そんな活動や運動が積み重なれば、「まちのど真ん中に網走JCあり」と言われる日が来るであろう。

【行動指針(バリュー)― 「今」の「自分」を生きる 】
過去を悔い、未来を憂いても、何もはじまらない。過去はもう過ぎ去ったし、そもそも未来は到底予測できない。過去と現在と未来をつなげるから、不安が生まれ、迷いが生じる。あるのは、ただこの瞬間の「今」でしかない。「今」の連続に、未来がある。私たちは、ただこの瞬間の「今」を鮮やかに生きよう。私たちは、まわりの評価や批判、他人がどう見ているかを気にしすぎてはいないだろうか。この世には、あるがままの「自分」しか存在しない。「汝が道を往け。しかして人の語るに任せよ」、何よりも大切なのは、自分は自分の道を往くことである。二度とない人生、二つとない命、「今」の「自分」を精一杯生きようではないか。

【拡大―組織変革と組織拡大による組織力強化】
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るわけでもない。
唯一、生き残るのは、変化に適応できる者である」 チャールズ・ダーウィン
地域からJCが消滅する時代。道東エリアにおいても、私が入会した2009年から、この12年間で、すでに2つの青年会議所が解散を余儀なくされた。青年会議所の存続が 危ぶまれている。 2020年は、網走JCの存続がかかっている。現在の会員数は、現状のまま推移する と、2023年には17名になる。撒かぬ種は生えぬ。そして、種を撒いても、育つに十分な土壌がなければ、生物は育たない。組織変革と組織拡大が不可欠である。JCに入会する理由に、自己成長、人脈形成、まちづくりへの関心等がある。一方で、JCが敬遠される理由に、時間的な拘束が多い、何をしているのかわからない、何を学べるのかわからない等ある。人口減少の中、会員拡大を成功させているLOMもある。大都市以外の青年会議所で拡大を成功させている所は、まずは組織を大胆に変革している。しっかりとした仮説を立て、拡大や出席率の向上につながる組織の土壌改良、組織変革を行う。
情熱。情とは心であり、熱とは熱さである。心を燃やし、相手の心を動かす組織拡大に取り組む。ピンチはチャンスでもある。変化なくして成長なし、変わり続ける事こそが真実、世代も変わり価値観も変化する中、網走JCの総力をあげて組織変革と組織拡大に挑もう。

【まちづくり―ICTの利活用による地域再興】
「自分が世界を変えられると本気で信じるクレイジーな人たちこそが、本当に世界を変えている」 スティーブ・ジョブズ
日本でも5G(第5世代移動通信システム)の商用化が開始される2020年、私たちの身の回りのモノがインターネットにつながる大きな変化の時代を迎える。単に通信速度が速くなるだけではない。超高速、超低遅延、多数同時接続の特徴を持ち、Society5.0時代の基盤となるインフラとして、人口減少や少子高齢化に起因する様々な社会課題の解決が期待されている。遠隔診療や救急医療、自動運転、建機の遠隔操縦、キャッシュレス、ロボットの活用等、実証実験が進んでいる。政府は、Society5.0を掲げ、省庁を横断してICTを利活用して課題を解決していく姿勢を鮮明にしている。また、民間ではNTTドコモは2018年2月から、5Gのオープンパートナーを募集し、企業や自治体と共に社会課題を解決する取り組みを進めるなど、官民の総力あげて、地域課題解決にテクノロジーを利活用している。網走市においても、人口減少、少子高齢化による担い手不足、産業分野での更なる生産性の向上、インフラの老朽化、医者不足、既存の交通網の維持、大都市との教育格差等、様々な課題が顕著である。今こそ、テクノロジーの力を駆使して課題解決に取り組むべきであるし、地方が生き残る術はそこにしかない。2020年からの5年先、10年先は、2010年から2020年までの10年とは、比較にならないテクノロジーの進化の時代になるだろう。ICTの利活用による課題解決によって、私たちは今こそ先駆けの精神で、地域を再興していきたい。

【青少年の育成―教育環境の整備による青少年育成】
「百俵の米も食えばたちまちなくなるが、 Ver21 4 教育にあてれば明日の一万、百万俵となる」 小林虎 とら 三郎 さぶろう
米百俵の精神。戊辰戦争により壊滅的な打撃を受けた越後長岡藩に対し、米百俵が寄贈された。その米の分配を望む藩士らに向けての言葉である。私たちは、常に青少年の教育について考え、家庭や地域で実践していく必要がある。テクノロジーの進化により、社会の変化が著しい中で、わが子をそして地域の子供たちをどう育てていくべきなのか。2020年、教育改革がスタートし、学校教育が大きく変化する。シンギュラリティの議論があるが、テクノロジーの進化により今後10年~20年で、49%の職業がAIや機械に代替される可能性がある。変化の激しい時代を生きる子供たちが、社会の中で活躍できる資質・能力を育成するために、2020年は節目の年となる。学校教育では、2020年に小学校で、21年に中学校で、22年に高校で、新学習指導要領が導入される。アクティブラーニングの導入や、小学3・4年生での外国語活動、 5・6年生での英語の教科化、また小学校でのプログラミング的思考を養う教育が行われる。中学、高校では、英語で授業を行うことも基本とされている。教育は、家庭、学校、地域のバランスが重要であり、学校任せの教育などあり得ない。学校教育に変化が必要であるように、親・大人も変化していかなければならない。どんな時代に変化しようが、逞しく生き抜くための教育を考え、学校教育や家庭教育を補完していきたい。

【ひとづくり―教育環境の整備による人材育成】
「やってみて 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ
話し合い 耳を傾け 承認し 任せてやらねば 人は育たず
やっている 姿を感謝で見守って 信頼せねば 人は実らず」 山本五十六
組織拡大が成功したのに、退会者が出続けるようでは本末転倒である。人の出入りが激しい組織は、内部になんらかの要因がある。人を育てる土壌を創り、まちのど真ん中で活躍できる、感動を生む人材を育てたい。子供は、親の背中を見て育つという言葉が正しいなら、アカデミー会員は先輩会員の背中を見て育つということになる。アカデミーの育成と、会員の育成に大差などない。青年会議所に入会し、人格・能力に秀でた尊敬できる先輩会員に触れれば、アカデミーはこうなりたいと勝手に思うだろうし、尊敬する先輩会員の良いところを真似していく。入会初年度から3年目までの退会者が多いが、小手先の知識でなく現役会員自らが人として尊敬されるよう自分づくりを行うことこそが、アカデミーの育成に不可欠である。「親」という字は、木の上に立って、「見る」と書く。「言う」ではなく、「見る」のである。時には忍耐も必要であろうし、親だからできることと、逆に親だからできないこともある。それと同じく先輩会員も、新入会員や経験の浅いメンバーに対し、親心をもってまずは自分がやってみせ、相手を信頼し、大胆にやらせてみよう。

【総務広報―よい関係をつくり、網走市と網走JCの価値を高める】
「人を生かすことで、一番大切なことは配慮だ。人に対する配慮、思いやり、共感がなければ、人を動かすことはできない」 松下幸之助
広報(PR)という言葉は、「宣伝」とほとんど同じ意味で使われるようになり、本来持っていた意味から離れてしまっている。広報(PR)とは、組織が関係する公衆の理解と協力を得るために、目指す方向と誠意をあらゆるコミュニケーション手段を通じて伝え、あわせて自己修正をもはかっていく継続的な対話関係である。単なる宣伝にとどまることなく、網走JCの価値を高める広報を実施する。また、地域にはそれぞれの分野で、活躍する多くの市民や団体がいる。私たち自身が気づいていない地域の価値というのもある。そのような市民や団体に光を当て、網走の価値をも高めてほしい。ターゲットや年齢層も踏まえつつ最適な広報戦略を考え、必要なスキルやマインドを習得することは、必ずや本業にも活きるであろう。「宣伝」に終始するのではなく、「よい関係をつくる」ことから始めよう。光と影。スポットライトの当たる表方と表からは見えない裏方。どんな舞台でも、表に立つ人と、裏で準備をする人がいる。感動を生む舞台の裏側で、多くの裏方の担いがある。まさに、総務の担いは、「陰徳を積む」という言葉に尽きる。やって当たり前、できて当たり前と思われがちな総務の諸業務がなければ、私たちの運動は成り立たない。円滑な組織運営を目指し、理事会・総会など組織の意思決定に関する諸会議、記録保存など組織の基盤整備については、テクノロジーを活用し、生産性を向上させてほしい。北方領土の問題についても、解決を願う我々の意志を市民に伝え、共に問題解決へ向けて、行動する。我々は確固たる国家観を持ち、国の問題である北方領土問題の解決に向けた基盤をつくるべく、運動を展開していく。

【防災―備えよ常に】
2019年10月、網走市、社会福祉協議会、網走JCは三者で災害に関する協定を締結した。2018年9月に発生した胆振東部地震による大規模な停電の際、日頃からの備えと連絡調整が必要不可欠と痛感し、締結に至ったものである。締結後の初年度となる2020年は、日頃から具体的にどのような備えをしていくか、しっかりと議論し不測の事態に備えていきたい。北海道地区協議会では、JCOBである先輩諸兄が、北海道地区協議会と北海道庁や北海道社協と連携し災害に対処していくため、北海道災害対策協議会を2017年に発足させた。そして、現に胆振東部地震後の復興・復旧のために現地で活動しており、様々なネットワークやノウハウを持っている。私たちJCの組織には、そういった横のネットワークが強力に存在し、スケールメリットも期待されている。JCならではのノウハウやネットワークを活かし、日頃から地域におけるつながりを強化することが、まちづくりの着実な一歩となる。

【他団体・本会・地区との連携】
2005年の発足から、15年が経過した網走青年団体連合会。これまで秋祭り、春かに合戦、サマーイルミネーション、海と大地の収穫祭など、各団体の強みを活かして、まちづくりを行ってきた。ここでも、人員の不足や加盟団体の減少など、担い手不足が顕著 である。子供たちの笑顔のために、共に汗をかき、まちづくりを行っている青団連の運動をはじめ、その他まちのイベントに積極的に参加・参画していく。すべては、ひとを感動 させるために。かっこいい背中を見せよう。2018年、48年ぶりに北海道地区協議会に中村圭会長を輩出し、本会・地区との、人・情報の交流が圧倒的に増え、LOMにも好循環が起きている。LOMあっての出向ではあるが、出向することで網走JCを相対的に見ることができるようになる。また、外部の人とつながり、地区や他LOMでの成功事例を学ぶことは、網走JCにも大きな刺激となる。網走JCの看板を背負って、地区協議会や道内46LOMの中で、存在感を出してほしい。本会・地区の事業にも積極的に参加することで、「北海道のど真ん中に網走JCあり」という背中を見せていこう。

【終わりに】
「子供たちの夢を叶える、ちょっと面白いおじさんであってほしい」
妻の言葉であり、JCに在籍する私への妻の願いである。私たちは理想を語る前に、家族の希望を叶えられているだろうか。自分の振る舞いを見て、子供は希望を抱けているだろうか。子供に希望をもてと言いながら、自分には明確な希望はあるのか。「ひとに感動を、まちをスマートに」そんな理念に向けて、まずは自分自身と真摯に向き合う徹底した自分づくりからはじめていこう。綺麗な言葉を語るよりも、背中で語る人になろう。人は、理屈では動かない。情熱をもった「面白いおじさん」となって、人の心を動かし、感動を生み出そう。朝顔はなぜ朝に咲くか。朝日を浴びて、朝顔が咲くのではない。朝顔は、夜の冷たさと闇があって、日の出に花を咲かせる。朝顔こそ、私たちの希望である。網走JCの存続がかかっている今こそ、この困難を乗り越えて、大輪の花を咲かせよう。
「もしもあなたが雨に濡れ 言い訳さえもできないほどに
何かに深く傷ついたなら せめて私は手を結び 風に綻ぶ花になりたい
花のように 花のように ただそこに咲くだけで 美しくあれ
人はみな 人はみな 大地を強く踏みしめて それぞれの花 心に宿す」