一般社団法人網走青年会議所
第72代理事長 水野 敏裕
2023年度 理事長所信「心がつながり、誰もが夢を抱き挑戦できる網走の創造」
【はじめに】
「はやく仕事を任せられ、最高の技術者になって活躍したい」という想いを胸に、情熱と期待を抱き、社会人となった。右も左もわからず、先輩方は優しさや、時には厳しさをもって接していただいた。
しかし、同じ年齢層が少ないことと、後輩がしばらく入社してこない、毎日が夜中までの作業といった下積み時代を過ごすにつれて、いつしか逃避の想いを抱くようになった。それまでにできていた人前で話をすることが、手が震えて声も震える。「はやく任せられる=はやく認められたい」という承認欲求が満たされないことの現状や今後の自分への不安が、自分自身にマイナスの思考を増幅するようになっていた。
そのようなわがままともいえる思考の自分をしっかりとみつめ、プラスの思考に導いていただいたのが社長であった。いつも優しく、ときには厳しく、いつも自分自身に何かを与えてくれる。「目の前に現れる壁は、乗り越えられるから現れる」逃避から挑戦への思考に導いていただいた。一人ひとりをしっかりとみつめ、成長を促す。ひとに与えるということを実践している後ろ姿をみせていただいた。自分自身に挑戦するためのレールを導いていただいた。絶対にあきらめない姿勢、貫き通す姿を、最後の最後までみせていただいた。その姿から、いつのまにか自分自身もひとの背中を支え、時には押すことができる存在になりたい。ひとつの夢を抱くことができた。そして、未来へとつなぐ約束をした。
自分自身が与えてもらうには、ひとを支えることをしなければならない。この奉仕の精神が自分自身、大切な仲間、組織、地域へと波及していくことで明るい未来が築かれる。それを実践できるのが、この青年会議所である。
どこか自分自身に歯止めをかけて、本気になることから逃げるのが当たり前になっていた自分に、情熱を燃やしてくれる仲間がいるのがこの網走青年会議所である。
この網走青年会議所は、ひととひとの心の絆をつなぎ、互いにもつ糸を引きちぎるのではなく、絡ませて太くしていくことができる組織である。その仲間は、一生その糸をもち続けて、永遠に心の支えになれる、そう信じられる今がある。
永きに亘り不易流行を繰り返してきた71年の歴史と伝統という偉大なるバトンをお預かりする。先輩各氏が永きに亘り紡いできたこの想いを受け継ぎ、高い位置で次世代へと受け継ぐことを成し遂げる。このやり遂げなければならない大きな責任に覚悟をもつことは、私にとって容易ではなかった。
私は交わした未来へとつなぐ約束を果たすために、自分を高めるべく博士号取得へ向けて大学院に進学し、仕事と自己研鑽の両立を図っている。その中に、歴史と伝統ある網走青年会議所の理事長の職に挑戦することで、何かを犠牲にしてしまわないだろうか、自分自身を追い詰め見失わないだろうか、その不安と葛藤が頭の中を包み込んだ。しかし、挑戦に覚悟をもたせてくれたのは、やはりここにいる仲間の絆であった。
夢を抱いて挑戦することに背中を支えて押してくれる仲間がいる、こんな素晴らしい組織である網走青年会議所で、理事長をさせていただけることに幸せを噛みしめるとともに、責任を全うする覚悟で満ちている。
先輩各氏に感謝と敬意を抱き、夢を抱き挑戦できる網走青年会議所、網走の創造に向けて全力を注ぐことをここに誓う。
【ひとづくり―心豊かな人財育成と新入会員の育成】
ひとは誰しも大小問わず成長したいと願っているはずである。そうであれば、自ら考え、判断し、行動して、責任をとる覚悟が必要であり、社会、会社、組織、家庭で成功している人たちは、皆この行動パターンをもっている。行動こそが真実であり、結果がないことに真実を見出すことはない、その気概をもったリーダーとしての覚悟を抱き行動しよう。そして、とても大切なことは、素直に人の話を傾聴し、決して否定せず、その行動しようとする勇気に助言ができること。いかなるときにも素直に謙虚に、心を通わし、思いを相通じて協力し合ってゆく、これが人財育成につながる。青年会議所は青年が集い、会議を通じて絆を深める場所である。ときには優しく、ときには厳しく、ひとのことを想い、お互いを生かし合う謙虚なものの考え方を養うことが必要である。ひととひとのつながりから、それぞれが認め合い、支え合い、ともに成長することで、さらに大きな潜在能力を発揮できる。自分自身を成長させてくれるのは、やはり「ひと」である。まずは、我々の心と心のつながりから、何かあたたかいと思える、そういった仲間の輪をつなげていこう。
近年、JCI網走では会員数の減少から、委員長を入会2年目から担うことが多い状況にある。さらに、近年の社会情勢からWEBでも委員会に参加が可能となり、その委員会の在り方に変化が生じていることは紛れもない事実である。多様な委員会運営の在り方においても、会員の主体性からアイデアを出せる環境を創ること、会員同志がお互いを尊重し合える場所を創ることは、組織力を高めることに重要な要素だということを真摯に向き合おう。
「網走青年会議所に入会する。」新入会員は、誰かに誘われる、会社から言われた、自分で門を叩くなど、きっかけはそれぞれ異なっていても、そこには皆「入会」という自ら考え、判断し、行動して、責任をとる覚悟をもった成果を出している。その大きな成果を成し遂げた会員は皆、最初にそれぞれ形は違っていてもJCI網走に希望を抱いたものである。ひとは夢を抱き、自らの目標が明確になっていると、そこに向かって進む意思をもつ。しかし、その過程であらゆる壁が現れて、心が折れて、あきらめることを選択して退会するという会員が存在することも事実である。あらゆる壁に対して、ひとりでは抱えきれないことを、誰かに話すこと、もしくは誰かがそれを汲んで共有し、仲間として夢を後押しし、その壁を乗り越えるための支えになることも必要ではないだろうか。夢を抱いた未来ある新入会員に先導して道を切り開く背中を見せよう。
【拡大―組織拡大とJCI網走プライドの構築による組織力強化】
地方の大きな課題として人口減少が挙げられる。人口減少は地域経済を縮小させ、地域経済の縮小が市の財政、消費、雇用、産業、教育等、あらゆる分野に波及して、さらなる人口減少を引き起こすことが懸念される。それに伴い、会員となり得る年齢層の減少も進行し、各地で解散を余儀なくされる青年会議所が存在していることは紛れもない事実である。しかし、このような過酷な状況にある地方であっても、会員数が増加している青年会議所が存在していることも事実である。この後者を認知するとともに、間口を広げることだけが拡大ではなく、青年会議所の誇りを見失わず、網走における会員拡大の最適解を見定めていこう。
また、網走青年会議所は長期在籍者が多くご卒業を迎え、在籍年数が3年以下となる会員数が過半数以上を占める構成となり、組織の存続と発展の危機はとても大きな課題である。今、我々が覚悟をもたなければならない大きな責任は、会員の帰属意識の向上から士気を高め、誠意をもって新たなリーダーを迎え、共に成長し、高い位置で将来へバトンをつないでいくことである。青年会議所は、共に悩み、苦しみ、笑い、喜び、色々な経験を得て、一生のかけがえのない仲間がそこにできる。今こそJCI網走プライドを構築し、多様な価値観や経験をもつ人財の個性を輝かせ、我々の運動から次世代が活躍する場を創造していこう。
【まちづくり―ひとのつながりから地域再興】
網走は、流氷が訪れるオホーツク海に面し、川、湖、山がある丘陵地として富んだ景観を有し、貝塚や網走刑務所、港湾などのような先人たちが築き上げてきた歴史と相まって、自然と歴史の恩恵により、観光地として多くの人が訪れる。また、国や北海道の行政出先機関が集まる網走には、社会インフラ整備や教育、医療、産業等、あらゆる職種の多くの働く人々が訪れる。そして、近年の社会情勢から止まっていたあらゆる人の流れは、今大きく動き出している。つまり、現状の網走には、観光や仕事で訪れる網走の交流人口は多く存在するのである。その網走は、官民協働や地域間連携、民間の創意工夫、あらゆる産業において稼ぐ力をもって、市民がそれぞれの立場で活躍されている。
しかし、その市民は皆、網走に夢を抱いているだろうか。網走を訪れるひとに、網走はここがすばらしいと言えるだろうか。ひとの魅力や活力がまちをつくる。ひとが夢をもって活力からまちを語ることができれば、そこに魅力が生まれるのである。つまり、網走のまちづくりは、網走の「ひと」なのだと私は願う。
網走の「ひと」がこのまちに夢を抱き魅力を伝えることができれば、網走の強みである交流人口は関係人口の創出へとつながり、まちは活性化していく。ひとはまちをつくり、まちはひとをつくる。地域づくりの担い手不足という課題は、まちに対して夢を抱き、語れるひとがいること、それが解決の糸口になり得るのではないだろうか。網走の「ひと」の笑顔からこれからの夢を抱けるまちづくりを創出しよう。
【青少年の育成―ひとのつながりから未来につながる青少年育成】
多様な学校や、就職環境の無い地方の若年層は、都市圏を中心とした他地域に進学し、帰郷せずに就職するというパターンは多く存在し、網走においてもその例外ではない。
この網走に住を置く我々の想いとしては、それぞれの環境があり網走に定住できなくとも、自らが育ったかけがえのない地元に対する故郷へのあたたかい想いは、心の中にいつもあり、それが輝きを放っていてほしいと願うものである。そのような心をもった人材が、網走を核として大きく広がり、ひととひとの輪をつないでいけば、その影響から網走と多様に関わる関係人口が増加し、地域づくりの担い手が増加するプラスのスパイラルが巻き起こる。その環境を創造していく網走のインフルエンサーには、網走に夢を抱いてほしい。
夢は見るものではなく、叶えるものである。夢をもつことで明日につながる希望と未来がもてる。その夢が希望となり、人生を切り拓く原動力ともなり、その人の「生き方」の道標ともなる。では、その夢はどうしたら明確にもてるのか。「私はこうなりたい」という想いは、その情報をもっていなければ選択できないのである。親がやっている仕事、自分の興味があること、誰かに影響を受けたもの。実は、青少年が夢を抱くための選択肢は、すごく限られているのではないか。私たち青年会議所はあらゆる多様な人材が集まり、歴史と伝統を重ねてブラッシュアップされてきた、青年の絆をもつ先導的機関である。その我々がもつ絆は、類まれのない唯一無二の存在であり、誇りである。我々の存在意義を思う存分に発揮し、網走のインフルエンサーに夢を届けよう。夢を抱いた青少年のたったひとつの笑顔は、そのひとの世界を変えた明るい未来である。
【総務広報―マーケティング戦略から網走市とJCI網走の価値を高める】
我々の発信から共感を得ること、それは地域にとって適した媒体の選択や発信のタイミング等、JCI網走をマーケティングする目線で広報することはとても重要である。私たちは地域から何を求められ、何を伝えたいのか。時代を先駆ける存在として革新的な先端技術を迅速かつ柔軟に取り入れ、我々の運動に対する共感を導くブランディングから網走とJCI網走の価値を向上しよう。
JCI網走は在籍年数が3年以下となる会員数が過半数以上を占める構成で成り立っており、運動の日程や内容、会員がやるべきことについて、組織内で情報共有を円滑にかつ確実に行うことが、組織の士気に大きく関わる。組織の風通しをよく、会員の能力を最大限に発揮できる情報共有を実現しよう。
理事会・総会など組織の意思決定に関する諸会議は、WEB参加も可能である構図が当たり前になっている。今この時代だからこそ「リアル」で得られる経験を大切にし、歴史と伝統あるJCI網走の知識とあわせて、我々が巻き起こす運動に知恵を導き出す環境を整備しよう。記録保存など組織の基盤整備は、新たな発想や柔軟な思考で生産性向上を目指し、習慣にとらわれず、JCI網走の未来へとつなぐ確かな情報として集積しよう。
北方領土の問題は、関係諸国の情勢に関わらず、解決を願う我々の意志を市民に伝え、共に問題解決へ向けて行動する。我々は確固たる国家観を持ち、問題解決に向け世論を高め、市民に主権者としての行動を促すべく、運動を展開していく。
総務の仕事は、決して目立つものではない。しかし、この組織にとって必要不可欠な存在である。網走という大地に根付くJCI網走という大木の根幹として、あらゆる情報という栄養素を吸収しながら組織を支えていこう。
【防災・減災に向けて】
近年の気候変動による集中豪雨や台風、連続降雨、地震動等の影響により土砂災害や浸水被害等が日本、北海道各地で頻発し、この網走においても台風による浸水や暴風雪による交通障害、胆振東部地震によるブラックアウト等、市民の生命や生活が脅かされ、安全性や利便性の低下や、経済活動が制限されたことは記憶に新しい。今こそ、災害の発生を事前に防ぐ防災の意識のみならず、災害の被害を最小限に抑える減災の意識をもち、不測の事態に備えよう。
日頃からの備えと災害対応体制の整備を目的として、網走市、社会福祉協議会、JCI網走三者による災害に関する協定を締結して4年目を迎える。先輩各氏がつないできた青年会議所としての組織のネットワークを活かし、不測の事態に地域に信頼される存在でいられるように、地域におけるつながりを更に深めていこう。
【地区大会の実現へ向けて】
網走青年会議所は、2021年に「第15期LOM中期ビジョン」及び「網走JC宣言」
を掲げて、2022年、その実現に向け第74回北海道地区大会主管立候補を決議した。札幌以外の地域で初めて開催に手を挙げ、1955年第4回大会網走大会の主管をして以来、網走青年会議所は6度の主管を経験してきた。我々は、新たな世代で北海道地区大会網走大会の実現へ向けて挑戦する姿勢を貫き、JCI網走の明るい未来を創出する。 まずは、JCI網走が大会を主管してきた歴史と伝統を踏まえ、地区大会主管立候補届出書の作成、現地調査への対応、会員会議所会議でのプレゼンテーションを着実に行い、地区大会誘致の決定を成し遂げよう。
そして、その先の地区大会成功へ向けて、会員間の情報共有による認識を深め、組織の基盤を創り上げ、会員一丸となって網走に地区大会の鍵をもたらす気概を高めていこう。
自分自身の壁は、乗り越えられるから現れる。夢を抱き挑戦しよう。
【本会・北海道地区協議会・他団体との連携】
網走青年会議所は、本会、北海道地区協議会へ多くの出向者を輩出し、網走の垣根を越えて日本、北海道でその存在感を示し、網走の価値を高めてきた。そして、各地の共に切磋琢磨する仲間がつなぐ絆と友情は、網走に新たな発想や知恵をもたらし続けるとともに、我々にJCI網走であるプライドを認識させてきた。本会、地区へ積極的に関わり、各地の魅力にあふれた同志との絆を大切につなぎ、新たな風を吹き込む推進力にしていこう。
また、網走市内の青年団体が集い、網走青年団体連合会が結束されて18年。まちの発展を願い、各団体の強みを活かし、結束してイベントを創出してまちづくりを行ってきた。しかし、人口減少とともに加盟団体の減少、人員不足など、担い手が不足していることは否めない。まちに感動を与え続けてきた網走青年団体連合会が電光のように輝きを放つよう、我々は積極的に参画していく。そして、まちのイベントにも積極的に参加・参画し、JCI網走への共感を深めていこう。
【終わりに】
自分のなかの青年会議所運動は、なにをやったら正解なのだろう。
私は自問自答を繰り返し、答えを出しても、それが本当の正解なのか今はわからない。自分がやってきたことが間違いではなかったといえるのは、きっと最後までやり抜くことで見えてくるのだろう。
私が委員長の担いをいただき、担当した例会で、委員会で推奨された講師をお呼びして青少年と会員に向けて公開講演を主催した。講師への講演依頼で自分の不徳から一度は断られながらも実施につなげた講演であった。講演後、送迎で空港に向かう途中、その講師は私に伝えてくれた。
「ある帰国子女の一人が、講演を聞いて私の考えは間違いじゃなかった、ありがとう。と涙ながらに言ってくれたよ。」私はその一言の感動を、今でも忘れない。
たった一人でも、大衆でもいい。ひとの心に届く、なにかを自分自身でみつけ、やり遂げることが大切なのだと自覚した。そして、何よりも、そこには志を同じくする大切な仲間が支え合っていてくれていることも自覚した。
死にかけたままの情熱が「こんなもんか」と僕に問いかける
失いかけてた希望の光が「ここまで来い」と僕を呼んでいる
自分に正直に、泥臭くても、がむしゃらに、一生懸命に、情熱を燃やせば、いつまでも心のよりどころにある仲間ができる。その輪を広げていくこと、それが、青年会議所が明るい豊かな社会をつくるために、社会により良い変化を生み出す運動の最初の一人として、率先して行動していくことにつながるのではないか。他の人と比べるのではなく、正直に、信念と勇気をもって前進する。背中を押してくれる仲間がここにはいるから。
心がつながり、誰もが夢を抱き挑戦できる網走の創造に向け、我々が先駆者となって情熱をもって進んでいく。