理事長所信 第73代理事長 田宮 佑介

一般社団法人網走青年会議所
第73代理事長 田宮 佑介
2024年度 理事長所信

「未来へつなげる夢と挑戦が溢れる豊かな社会の創造」

【はじめに】
私は、この網走市に生まれ、この地で生きています。
網走市の中でも中心市街地からは離れた集落で生まれ、幼少期は非常に貧しい生活をしていました。高校卒業後に網走市を離れ十勝に数年暮らし、家業のための修行ではあるがサラリーマンを経験し、自分で稼ぐことの大変さと喜びを知りました。しかし、当時の私は網走にいても十勝にいても、住み暮らす地域というのは単なる生活している場所という認識しか捉えておらず、まちや地域の人たちに積極的に関与しようという意識も無い狭い世界の中で生きていたのだと、過去を振り返ると実感します。2012年に網走青年会議所に入会した当時、熱意のある先輩諸氏の皆様に、多くの衝撃と人生観を変えられる多くの言葉に出会いました。私の青年会議所での経験は常に「背伸び」をしている状態で、能力以上のものを求められ、その期待に応えるために精一杯背伸びをしてやり遂げ、さらに高い位置の目標に挑戦する、その繰り返しでありました。気付けば入会から11年が経ち青年会議所の中での立ち位置も大きく変わっていました。多くの方に支えていただき、支援していただいた恩を返すため、さらにこれからのメンバーに私が経験してきた青年会議所をつなぐために、私は一般社団法人網走青年会議所の理事長を務めるに至りました。学歴も無く、大きな企業の代表でも無い私が理事長の職を受けさせていただけるのは、LOMの中での経験と、そのなかで出会った先輩諸氏の皆様、支えてくれるメンバーがいるおかげであると感じています。現役会員の中でも青年会議所に在籍する年数が長くなり、良い事業、一生懸命やった人の姿、やり切った人の笑顔を見てきました。近年では私の意見が運動に強く影響を与えてしまうことが多く、責任を感じながら活動しています。しかし、それは今まで見てきた議案や会議の経験、先輩諸氏の言葉から得た知識あるからこそ言える意見であり、この先も多くの皆様に支えていただきながら、さざれ石の巌となり、網走青年会議所の歴史と伝統をつないでいきます。

【誠意ある行動が夢へ導く】
私たちが網走JC宣言に掲げる「誰もが夢を抱き挑戦できる網走の創造に向け、誠意を貫き通し行動する」とは、「夢」という漠然とした目標に向けて目的を掲げ「挑戦」す
る、一歩踏み出すきっかけを運動として実行する。その実現に向けて私たちは「誠意」を貫き最後まであきらめず行動することを忘れないように、繰り返し唱和しているのです。昨今の社会情勢に目を向けると、長期低迷する経済、人口減少という環境のもとでありながら、地域課題において行動を起こす市民は少ないことから、利己主義が蔓延していると言えます。その一方で、テクノロジーの進化により地方に住んでいても情報や物質的にも不自由なく暮らすことができ、多くの市民において衣食住に直ちに困窮する課題も少ない時代であることも、他者や地域に関心を持ちにくい要因であると考えます。この先も個々の市民が、利己主義に陥り課題に対し行動を起こさなければ、社会は停滞し崩壊への道をたどるでしょう。
市民一人ひとりが自発的に夢を意識して挑戦し、自己実現の喜びを感じる。その行動は、他の市民の夢への意識を触発し、新たな挑戦を生み出します。そのような正のスパイラルが生まれたとき、物質的な豊かさではなく精神的にも豊かな地域の実現につながるのです。そのような地域がすぐに実現できるものではありませんが、私がこの網走のために誠意をもって挑戦することを決意したことも、地域を思う一端であり、魅力のある会員が集う網走青年会議所を未来へつなぐことが私たちの誠意であり、誠意ある行動が夢へ導くと信じ、2024年度の運動を展開してまいります。

【地域をつなぐ 運動を最大限に推し進める総務広報】

運動の中心に総務がある

青年会議所という組織を運営するうえで一番大切なものが総務であり、総務の諸業務がなければ、私たちの運動は成り立たないのです。光の当たる表方とそれを支える裏方、青年会議所が実施するどんな運動にも、表に立つ人と、裏で準備をする人がいます。さらに準備をする人を支える多くの総務の担いがあり、まさに総務の担いは、「縁の下の力持ち」という言葉で片付けられ、やって当たり前、できて当たり前と思われがちなことが現状です。
理事会・総会など組織の意思決定に関する諸会議の準備、記録保存など組織の基盤整備については、誠意をもって実施してもらわなければいけませんが、それだけに留まらず総務を
中心にメンバーを統率し、全員で組織を支える意識をもつことが必要です。

広報が運動の基盤であり運動の中心となる

広報と聞けば、運動の発信や事業のPRが主な仕事であり、毎年担当した委員長は前年とは違う新たな発信方法を模索し実施してきています。これまでの歴史の中で様々な広報が行われており、私が入会した10年余りの中でも紙媒体のチラシやポスター、インターネットを使った発信など、今でも形を変え実施してきている広報ツール、今では行っていない広報、これから考えられる広報、本年度は今までとこれからの広報についてしっかりと分析検討することが必要です。日々の発信において作業が多く、後半に発信力が落ちてくる傾向がある広報を、年間を通し大きな発信へとつなぐためには、シンプル且つ効果的な広報手段を考え、会員全員が広報の発信者として運動を広めることが必要です。
北方領土の問題についても、解決を願う我々の意志を市民に伝え、共に問題解決へ向けて行動していきます。我々は確固たる国家観を持ち、国の問題である北方領土問題の解決に向けた基盤をつくるべく、運動を展開していきます。

組織一体となった運動を展開する

総務広報は組織の下支えではありません。2024年度は総務広報が運動の中心にあり、それを基盤として、各委員会が運動を展開していきます。「まちづくり」「ひとづくり」「青少年育成」すべてを網羅する「広報」を実現するために、新たな広報ツールを作成し、市内外へ発信していきます。さらに、そのツールは教育や観光促進にも活かされ、市民が愛郷心を育むことができるものとなり、2024年度の運動すべてにこの広報ツールが連携することで、組織一体となった運動展開を可能にしていきます。

【地域と子どもたちの未来をつなぐまちづくり】

先人への感謝の気持ちと「恩返し」

私たちが生まれ育った網走。当然私たちが生まれる前からこのまちは存在し、多くの先人たちによって現在までつながれてきた歴史があります。私たちはその歴史の上に存在しており、今まさに歴史を作っていく立場にいることを認識しなければなりません。
「人は一人では生きていけない」そんな当たり前のことはわかっていてもテクノロジーの進化は一人で生きていけるという錯覚に陥ります。インターネットで人も物もつながることができ、まちづくりにおいても技術の進化がまちの発展に必要不可欠なものとなっています。改めて述べますが、いくらテクノロジーが進化しても、人は一人では生きていけません。人とひとのつながりを意識し、この網走で生まれ、地域の大人に守られ、育てていただき成長してきたことを再認識し、地域への恩返しをすることが、私たちの責任であります。

記憶に残る青少年育成

日本の若者は、世界一安定志向だという調査結果があります。安定を求める志向は行動を保守的にしてしまうものです。しかし、挑戦しなければ大成功はなく、特に挑戦は若者の特権であり、若者が挑戦しなければ地域も国も確実に滅びていきます。かつてこの地域にもたくさんの挑戦者がいて、今はその挑戦者が生み出した遺産のおかげで、私たちはこの地に住み暮らせているのです。その遺産が枯渇する前に挑戦者を生み出すことは地域にとっても国にとっても喫緊の課題です。地域において挑戦する若者をいかにして増やすか、そのカギは身近に挑戦者がいることであると考えます。「挑戦しろ!」と私たちがいくら叫んでも、挑戦者は増えません。知らない誰かが挑戦して成功した話を聞いても、それは他人事かもしれません。しかし、身近な人が挑戦して華々しい実績を上げたならばそれは自分事となり、自分にできる挑戦は何だろうと考え始め、目線が上がり視野が広がります。挑戦が溢れる地域の創造には、失敗を恐れず安心して取り組める環境の構築が必要であり、挑戦者に対するフォローアップ、そして挑戦を高く評価できる地域づくりが求められます。
第15期LOM中期ビジョンで述べているように、私たちは子どもたちが夢を抱き挑戦できる地域を目指し運動を展開しています。網走青年会議所は、これまでにも創始の精神でもある青少年育成事業を展開し数多くの成果をあげてきました。子育て世代である私たちがすべきことは、地域の子どもたちに共同体との関係性を認識させ、感謝の気持ちを心の中に芽生えさせることが重要であると考えます。さらに子どもたちが能動的に物事へチャレンジする意識を醸成し、他者のために行動する喜びを実感してもらいます。地域への帰属意識が高まれば、やがて子どもたちが大人になった時、まだ見ぬ未来の子どもたちへとさらにつながれていくと信じ、子どもたちが未来を明るく照らす地域の宝となることこそ、私たちが目指す青少年育成の意義であり、青年会議所だからこそできる運動であると考えます。

【想いをつなぐひとづくり】

日本人としての心と利他の精神をもった人間力開発

青年会議所の運動の根幹でもある人間力開発は、会員の意識変革が第一で、そこから市民と共に地城・国の問題についての運動を展開することが求められると考えています。
北海道、国、更には世界でも多種多様な課題や問題が山積されていますが、直接的に実感することが難しく、それらの問題は、近い将来、日本の根幹を揺るがす事態へと発展する可能性もあります。ここでの課題は、それを無関心としてしまうことであり、現代の社会においてシステム化していくなかで、利己の弊害に対して洞察がされないまま個が拡大していることが原因であると考えます。そこで私たちは、滅私奉公に美を汲み取ってきた日本の精神文化を再認識し、日本人として正しい道を知る必要があります。
また、現代で見失いがちな研ぎ澄まされた人間感性と広い視野で、世界に誇る日本の「おもてなし」や「思いやり」といった当たり前のことを、日本人としてJAYCEEとして当たり前にできるように、会員の行動を変えていくことが必要です。
「青年会議所はまちのため人のために時間を使って、体力やお金が減るだけじゃないか」という人がいます。しかし、昔から「情けは人の為ならず」という言葉があります。情けは人のためにならないという意味ではなく、「人のために行動すれば、相手のためだけでなく巡り巡って自分や周りによい結果がもたらされる」という言葉です。私たちは自分の行動に責任と自信を持ち行動していきましょう。

歴史をつなぐ新入会員育成

会員拡大は、JCの根幹である市民意識変革運動の最たるものであり、新たな仲間と互いに成長する機会は組織に新たな活力をもたらし、私たちの運動をより良く変化させていく力を高めます。
青年会議所に入会したメンバーが尊敬できる先輩会員と出会い、共に活動することが有益であるならば、自ずと青年会議所の活動に対しても積極的に参画することは明白であり、新入会員は私たちの背中を見て「この人に付いていこう」「真似しよう」と思うのです。まずは私たち現役会員が普段から立ち振る舞いを意識し、尊敬される人財でなければなりません。
あわせて、組織に所属する以上は、誰もがその組織の歴史や理念を心得る必要があります。
新入会員が網走青年会議所の会員であるという意識を常に意識できるよう、組織の歴史や理念を常に学べる機会を創出し続け、即戦力となるよう新入会員育成に力を入れていきます。

【さすが網走と言われる地区大会主管へ向け 他団体・本会・地区との連携】

2025年度に開催される第74回北海道地区大会を主管することが決定いたしました。
網走青年会議所は、1955年に札幌以外で初の地区大会主管を実現した地方主管発祥のLOMであり、これまで計6回の主管を成功させてきました。私達は、先輩諸氏がつないできた歴史と伝統を継承し、「さすが網走」と言われるような、地区大会の実現に向けて邁進いたします。網走市内はもとより全道に向けた大きな運動発信の機会となる地区大会の主管に向けて、組織と会員一人ひとりが謙虚に己を見つめ直し、主管前年度においてすべき万全の準備をしていきます。
また、外部の人とつながり、地区や他LOMでの成功事例を学ぶことは、網走JCのメンバーにも大きな刺激となります。本会・地区の事業にも積極的に参加することで、来たる2
025年度の第74回地区大会の主管へつなげていきます。

【終わりに】
空中に投げられた石にとって、落ちるのが悪いことでもなければ、昇るのが善いことでもない。

落ちることか、昇ること、(成功か、失敗か)ということが問題ではなく、私たちは変わらずJAYCEEとして相応しい行動であるか、どこに向かっているのかを大切にしていかなければなりません。

私からメンバーにお願いするのはひとつだけ

関わった人たちを「楽しませてください」
そして自分自身が「楽しんでください」

必ず、辛いとき、苦しいときがあります。抱え込まずに誰かに頼ってください。
誠意を貫き通し最後まで走り切りましょう。

青年会議所の歴史をつなぐのは私たちであるのだから。